区政レポート2009年春号からの抜粋です。よろしければ区政レポートもご覧ください。こちら
NPOは地域力アップの原動力
白石 「官から民へ」……様々な分野で、委託・民間化が始まっていますが、行政と民間の物差しのギャップもあります。今、「新基本構想」の取り組みで、地域力アップのひとつに、NPOへの期待もあるようですが、経営とサービスのバランスが取れずに苦戦しているNPOも多く、練馬区もどのようにしたらよいか悩んでいるようです。
坂本 経営がうまく行っているのはほんの一握りで、区の直営的なNPOだけですね。うちも『委託』を受けて活動したことがありますが、物差しの違いにぶつかって、苦い思い出だけが残りました。
長島 地域の中でのNPOは、まだまだ難しい面があります。活動に対する問合せはたくさん来ますが、NPO=ボランティアという認識も強いようで、私の活動も最後に「お金はかかりませんよね?」と確認されて、「実は…」と、有料かと分かると依頼はされませんでした。
白石 練馬区も「練馬区NPO活動支援センター」を立ち上げ、三年が経過しましたが、大きい成果は見えてきていません。
行政と民間の物差しのギャップ
坂本 行政は「民間でできることは民間で」と言いながら、いざとなると任せ切れなくなるようですね。任せた責任が自分のところへ回ってくることを嫌がるのかもしれません。だから『直営店』的なところへ仕事を振っていくのでしょう。
白石 民間委託になった駅の自転車管理をされている方から、区から委託に経営が変わったら、報酬が引き下げられ、不満の声が上がり、多くの声として直訴したら、報酬がまた元に戻ったという報告がありました。
坂本 帳尻は常に末端で合わせようとするわけですよ。リスクを負うのが民ということになります。でも、ある意味、民は黙っていてもいけないということですね。
長島 温度差は私も強く感じています。介護予防の一環として、「いきがいデイサービス」という委託事業があり、私の団体もプロポーザルしたことがありますが、その時、「そちらは音楽の団体ですよね?」と言われてしまいました。
白石 申込場所が違うよ…というニュアンスですかね?
長島 そのようでした。「音楽工房のあ」ではデイサービスで「うたごえ喫茶」などの活動を行っていて、音楽が与える効果を確認した上でエントリーしたんですけどね。
真の「協働」とは?
白石 現在、練馬の協働実施状況(参照)があり、行政は、協働の相手先を地域の既存団体(町会・協議会…)に任せていくことと考えているようです。「新基本構想審議会」では、「既存の団体からだけでは、限界をかんじる・・・」との意見がありましたね。
長島 そうですね。まず、地域それぞれの人たちが、自分たちのこととして、みんなで考えていく。そして、行政は力を提供していくことが、本当の意味での「協働」の成立と言えるのではないでしょうか。現状では『陳情』を含めて、地域への結果に結びついていくのに時間がかかり過ぎているように思います。
坂本 地域の「民・民」間でのコミュニティをというなら、互いの気持ちを受け止め、見守り、そして支援していく状況がほしい。任せきれなくて、途中で口出し、手出しでは育ちませんよ。
白石 自由な発想によるコミュニティ、協働は地域の中で、力として発揮するのには十年以上の時間がかかるといわれています。確かに、行政はそれが待てずにいるようです。行政も人を信頼して自主的な地域からの声にも広く聴き、任せるべきところはしっかりと任せ合う「ゆとり」も必要ということですね。
本日はありがとうごさいました。
今対談参加者
練馬区議会議員
NPO法人 ケアステーションぽかぽか
理事長 白石 恵子 (写真中央)
高松に保育と介護の融合施設を設立し、現在、区議会議員として活動している。
NPO法人 音楽工房のあ
代表理事 長島潤氏 (写真左)
クラシック音楽の演奏家たちが中心となり、子どもから大人まで楽しめる曲目や演目を選び、生活の身近な場所で活動。地域福祉をテーマとした音楽活動団体。
NPO法人 すみよい街づくり研究会
副理事長 坂本広海氏 (写真右)
高齢化社会は老若男女が等しく考え、地域社会と共に知恵を出し合い、夢に満ちた豊富な経験を活かす場。元気なシニアが中心となり、環境にやさしい「すみよい街づくり」のために活動している。