ここ数日、バスの運転手の健康管理による事故が相次いでいる。事後の原因究明の中で、〈高齢者てんかん〉による」ことも解り、この対策と周知啓発をしていかなくてはならないだろう。ぜひ、一読をしてほしい。
てんかんというと乳幼児~18歳までの発症率が80%高いことから、若年性のイメージがありますが、欧米の「年齢別発症率・罹患率調査」によると、乳幼児時期の発症率は高く、30~50歳の間は減少していくも60歳前後から発症・罹患率が急増、75~80歳前後には、乳幼児の発症率を超えていくと報告がされました。
主な原因として、脳梗塞・脳溢血等による脳血管障害が30−40%、次いで頭部外傷、アルツハイマー病型の神経変性疾患、脳腫瘍によるもの等が挙げられています。これは、外部・内部から脳への障害が影響し起こることがわかっています。ところが、残りの1/3は原因が不明であり、高齢による身体の変化や疾病等から発病することから「高齢者てんかん」「高齢発症てんかん」と言われています。
若年者てんかん症状の高齢者てんかんの症状の違いもあり、若年者てんかんの症状は、泡を吹く、全身がガクガク震える、倒れる等、全身症状のけいれん発作で、周囲も気づきやすいことから受診・治療へとつながっていくとのことです。
高齢者てんかんの場合は、二通りあり、脳の一部分の興奮による単純部分発作では、けいれんのような発作は起きることが低く、むしろ、ぼっーとなっていたり、認知障害の物忘れが短期的な症状程度で済み、本人もその状態を覚えていることが特徴的です。ところが、この一過性の症状がてんかんと思わず、
受診・治療に至らないとのことです。
また、複雑部分発作の場合は、脳全体の発作のため、意識障害が伴い、もうろう状態が長く、呼びかけても返事をしない、物忘れが強くなる、手・口・舌も細かく動かす、徘徊をする等、老人せん妄のような認知症症状と類似していることから、てんかんではなく、年齢的にも認知症の判断となり、同じように適正な治療に至らないというケースが多いとのことです。このように、どちらも「てんかんは子どもの病気」「自分がてんかんになるわけがない」という思い込みや固定観念で、初期の発症から受診するまでに時間を要してしまうとのことです。
高齢者てんかんの検査・治療方法は、「もの忘れ外来」の受診、HDS―R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やMRIから異常なしと診断されると、次に問診と脳波検査で「てんかん」と診断されれば、若年者てんかんと同様の治療薬抗てんかん薬の服薬が効果的で、8〜9割の人が症状を抑えることができるとのことです。
ところが、高齢者の場合、加齢による様々な病気の合併症と併用薬との副作用などの判断が複雑化していること、患者自身も症状や治療効果を的確に把握できないことから、家族の観察力や医療従事者の適切な鑑別診断と薬物治療に向けたガイドラインが日本てんかん学会より示されました。
高齢者てんかんは、ある一定の年齢からの発症率が高くなるも、服薬によって安心して暮らせることが出来ることから、区においても正しい知識と早期発見・早期治療の必要性を区民にも周知することが重要になると考えます。
特に、医療面においては、高齢者の多くが何らかの疾病があり、かかりつけ医がいること、てんかん症状によっては、脳神経外科・精神科・神経内科等との医療連携や薬物療法においては、症状・合併症や服薬状況による副作用の注意を払わなくてはならないことから、薬剤師会から啓発されているお薬手帳の活用も重要となります。高齢者てんかんの知識や医療体制に向け区のご所見をお訊かせください。
現在、高齢化社会・高齢化率の上昇も視野に入れた高齢者対策の一つとして、高齢者・家族向け「高齢者の生活ガイド」『自分でできる認知症の気づきチェックリスト』等。高齢者の暮らし・生活・病気の気づき等について様々な刊行物が発行されています。これらの中にも、「高齢者てんかん」についての情報の掲載が必要と考えます。
現在、「練馬区在宅療養推進協議会」が設置され、部会の中に「認知症専門部会」があり、認知症のメカニズムと正しい知識・治療についての啓発方法や情報交換、地域支援の構築がされています。
認知症のBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)という行動や心理症状の中にも、実は、てんかん再発による症状・行動がみられると学会報告もされていることから、身近な家族や介護サービス事業者の観察や判断・かかりつけ医への情報提供方法も研究していくことが必要と考えます。
このように、高齢になれば起こりうる「高齢者てんかん」の理解と正しい治療への啓発がされることで、地域で安心して、その人らしく暮らせる一助も区の責務と考えます。区のご所見をお訊かせください。